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採用時の身元保証について

保証契約書

社員の採用の際に、「身元保証」について書面を提出させる企業は多いのではないでしょうか。

身元保証書とか、身元保証契約書とか、形はいろいろだと思います。

 

これらを提出させる目的としては、

①新入社員が「犯罪に近い不正行為」「考えられないような大失敗」をして、会社に多額の損害を与えたときに、本人と連帯して損害を賠償してもらう。

という表向きのものや、

②余程のことがない限り損害の賠償を求めるつもりはないけれど、本人の「大きな失敗や不正行為によって身内(身元保証人)に迷惑をかけてはいけない」という緊張感の醸造に期待したい。

という、精神的?なものもあるでしょう。また、

③身元保証ができるような間柄の人の存在を把握しておき、本人の近親者と慎重に話し合いをしなければならない事態に備えたい。

というようなこともあるでしょう。

 

②や③の目的で身元保証書を提出されている方には、あまり意味のないお話かもしれませんが、今日のお話は、

「御社の身元保証書で、本当に、いざというとき損害賠償請求はできるでしょうか?」

というお話です。

 

御社の身元保証書はどんな感じですか?

本人が雇用契約に違反し、または故意若しくは過失によって万一御社に金銭上はもちろん業務上信用上損害を被らしめたときは、私は直ちに本人と連帯して、御社に損害額を賠償します。

こんな感じでしょうか?

 

この部分は問題ありませんし、むしろこれが本旨ですから、これが抜けていては問題です。

 

問題となるパターンは、

「極度額を定めていない」

というものです。

 

平成29年改正の民法では、

個人が行う根保証契約(簡単に言うと、保証しないといけない金額がまだ確定していないのでわからない保証契約のことです。*1)は、すべて極度額(簡単に言うと限度額です。)の設定をしなけれならない。

となりましたので、例えば、

なお、損害額の上限は100万円とする。

というような記載が必要です。

その他、

  1. 保証契約は、必ず書面ですること。
  2. 保証契約の期間は、原則3年、商工業見習者(早い話が新入社員です)は5年が限度です。*2
  3. 次のような場合は、保証人に通知しなければならず、この場合、身元保証人は身元保証契約を解除することができます。*2
    ・本人に業務上の不適任または不誠実な事実があって、このために身元保証人が責任を取らなければならなくなるおそれがあることを知ったとき。
    ・本人の任務または任地を変更し、このために身元保証人の責任が重くなる、または、本人に対する監督を困難にするとき。

などの注意事項があります。

 

一度確認してみて下さい。

*1:身元保証契約は、問題が発生してはじめて、本人と連帯して賠償しなければならない金額がはっきりしますので、根保証契約に分類されます。
*2:記載必須の事項ではありませんが、身元保証人にとってこれより不利になる取り決めは無効となります。

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