地階又は3階以上の部分に宿泊施設や風俗営業施設を設けるときに気をつけること(特定一階段等防火対象物)
タイトルからしてややこしそうな話ですが、今日は実際ややこしい話になります。
(いつものようにできるだけわかりやすく説明するために、細かいことをすっ飛ばして書きますので、厳密には正しくないこともありますからご注意ください。)
「特定一階段防火対象物」という消防関係の言葉があります。
特定一階段防火対象物とは、次のような建物を指します。
地階又は3階以上の階に特定用途がある建物で、
階段が1つしかないもの。
ただし、階段が屋外に設置されている場合を除く。
「特定用途」とは、消防の視点から見て、「ちょっと危ない建物の使い方」のことです。
例えば、
・老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム等
・救護施設
・乳児院
・障害児入所施設、障害児支援施設、短期入所施設、共同生活援助施設
・劇場、映画館、演芸場又は観覧場
・公会堂又は集会場
・キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの
・遊技場またはダンスホール
・性風俗関連特殊営業を営む店舗等
・カラオケボックス、個室ビデオ等
・待合、料理店その他これらに類するもの
・飲食店
・百貨店、マーケット、物品販売店舗又は展示場
・旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
・病院、診療所、助産所
・老人デイサービスセンター等
・更生施設
・助産施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童養護施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター等
・児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設、放課後等デイサービスを行う施設等
・身体障害者福祉センター、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム等
・幼稚園、特別支援学校
・蒸気浴場、熱気浴場等
等、不特定多数の客が集まる施設や、子供、老人、体が不自由な方が滞在する施設などを指します。
地下や3階以上の部分でちょっと危ない建物の使い方をしていると、火事が起こったときに逃げ遅れが発生しやすいので、消防の観点から規制強化を求められる、ということになります。
既に「特定一階段防火対象物」になっている(=屋内階段1つしかないビル等で、先に3階以上に特定用途がある)ビルで風俗営業や宿泊施設を設ける場合は、強化された規制を受けるものの、それさえ受け入れればいいだけなので、それほど大きな問題はなりません。
しかし、3階以上の部分に、そのビルにとってはじめての風俗営業店や宿泊施設が入るような場合、つまり、これを契機としてビルが「特定一階段防火対象物」になる場合は、ビル全体の規制が強化されてしまうので、注意が必要です。
例えば、
・特定一階段防火対象物でない建物の場合、階段部分に取り付ける火災感知器は高さ15m以内の間隔で取り付けられていますが、特定一階段防火対象物になると、高さ7.5m以内の間隔で取り付けなければならなくなりますから、多くの場合、火災感知器の増設工事が必要になります。
・特定一階段防火対象物の自動火災報知機設備(火事が起こるとジリリリと激しく鳴るアレ)は、「再鳴動方式」にしなければなりません。(音を止めても自動的にまた鳴り出す)
・特定一階段防火対象物で避難器具の設置が必要な場合、通常の建物で設置する避難器具と比べて「より安全で簡単に使用できる規格」の避難器具を設置しなければならないので、多くの場合、工事が必要になります。
・特定一階段防火対象物となった建物は、年に1回以上、有資格者に「防火対象物点検」を行わせ、消防署に報告することとなります。(通常、費用の掛かることです。)
のようなことが挙げられます。
どれも解決するために費用の掛かることですから、大家さんと店子さんの間でもめる原因になりやすいです。