パチンコ屋さんの景品買取所うんちく その13「金景品について その2」
元パチンコ店員、元パチンコ店店長、元パチンコ店運営会社の部長という経歴の行政書士である私が、気が向いたときにパチンコ店の裏話的なことを書くコーナーです。
今日のテーマは「金景品について」その2回目です。
前回の記事(→■)では、
三店方式を維持するためのコストを何とか下げようじゃないか、という取り組みについて紹介しました。
第1に「買取所の中で働く人の人件費を抑える」こと。
第2に「景品卸売業者の運送コストを抑えるために、特殊景品を小さくした」こと。
でした。
特殊景品をカード型にすることで、簡単に、たくさん運べるようにした、というお話でした。
今日は、この続きです。
特殊景品小型化の、最たる例が「金景品」です。
写真ではわかりにくいと思うのですが、左から金1g、0.3g、0.1gです。
プラスチックケースの大きさは、縦横3センチ前後ですから、相当小さいです。
さて、この特殊景品の小型化による運送コストの圧縮は非常に功を奏したわけですが、問題がなかったわけではありません。
風俗営業法(風適法)では、パチンコ店の賞品(=景品)の提供について、次のように定めています。
「ぱちんこ屋等においては、当該遊技の結果として表示された遊技球等の数量に対応する金額と等価の物品を賞品として提供すること。」
この条文の意味を、簡単に説明しますと、例えば、
・玉1個4円で貸しているお店では、
・獲得した玉30個に対しては、市場価格120円の賞品(例えば、缶ジュース)と交換しなければならないし、
・獲得した玉2500個に対しては、市場価格10000円の賞品(例えば、家電製品とか財布とか)と交換しなければならない。
ということになります。
ということで、換金のための単なる記号の役割しか果たさない特殊景品ですが、それでも景品であることには変わりないので、「一応は市場で価値が認められるもの」でなければなりませんし、その価値に応じた玉(メダル)の数で交換しなければなりません。
大阪の特殊景品「香水入れ」を例に挙げると、香水入れとしての機能がありますし、2500円くらいの価値がある・・・・のかな、と思います。
ただ、これでは景品はカードのように薄く、小さくはできませんよね。
金景品は、小型化するために非常に価値の高いもの、「金地金」を景品にしたからこそ、市場価値を維持しながらここまで小型化できました。
しかし、景品が「金」だったからこそ、問題が生じました。
1.香水入れと違って、金は景品買取所以外の「貴金属買取ショップ」でも買い取ってくれる。
タテマエはともかく、特殊景品は、「パチンコ店」「景品買取所」「景品卸売業者」の中だけをグルグル回ってもらわないといけないものです。
仕組みがそのようになっています。
特殊景品が三店方式の三角形の外に出てしまうと、仕組み上、戻ってきません。
探し出して買い戻すか、新しく作って補充しなければなりません。
これでは別のコストが生じてしまいます。
2.香水入れと違って、金は市場価格が変動する、しかも基本的に上がる一方。
香水入れは、市場価格が簡単には変わりません。
だから、お店はずっと同じ価格設定をし続けることができ、景品買取所も同じ価格で買い取り続けることができます。
対して金は、毎日価値が変わるものです。
また、それが客観的に明らかな商品です。
あるとき、1と2の問題があらわになります。
どんどん金景品の在庫がなくなっていっていることに気が付きます。
パチンコ店がお客さんに渡した金景品が、どういうわけか景品買取所に持ち込まれていないようです。
どうしてでしょう。
それは、「金価格の高騰」が原因でした。
誰かが思いついたんですね、「景品買取所で買い取ってもらうより、貴金属買取ショップに売ったほうが高く買ってもらえる」ことを。
業界は大慌てです。
早く食い止めないとどんどん金景品が持ち出されてしまう。
補充するのに莫大な費用がかかる。金だけに。
対策としては、市場の金価格に応じて買取価格を上げるしかないです。
買取価格だけを上げると大赤字になってしまうので、パチンコ店の金景品の価格もあわせて上げることになります。
というような経緯から、金景品を使っている東京などは、定期的にパチンコ店の金景品の価格と景品買取所の買取価格が変更しています。
当時、金景品を使っていなかった私たちは、この話を聞いて大笑いしたものです。