旅館業と「水」の話
旅館業(=簡易宿所、ホテル、旅館等)の営業には、水が欠かせません。
宿泊者は、お風呂に入ります。まあ、シャワーで済ますかもしれませんが。
いずれにしても、水が要ります。
トイレもしますね。
多くの場合は水洗トイレでしょうから、やっぱり水が要ります。
起きたとき、多くの人は顔を洗ったり、歯を磨いたりしますね。
ここでもやっぱり水が必要。
そもそも、人が一晩そこで過ごそうというのだから、水を飲むこともあるでしょう。
どうやったって、宿泊施設には水が要る。
幸い日本は水が豊富にあるので、宿泊事業をしようと思えば、上水道から引っ張ってくるか、井戸を掘って水をくむことで、水の確保は容易です。
許認可の面から言うと、井戸水を使う場合は、人が口にすることができる衛生状態の水である必要があります。
(水道水を使う施設でも、自治体によっては、水質検査を求められることがあります。)
でも、忘れがちなのは、もう一つの「水」のこと。
清潔な水を確保して、お客さんが使う、ここまではいい。
「水を使う」とは、多くの場合、水を消費することではありません。
「水を汚す」ことを意味します。
ここで言う、もう一つの「水」とは、「汚水」のことです。
お風呂に入れば汚れた水ができる。
トイレを使っても、顔を洗ったり、歯を磨いても、汚れた水が生まれる。
これをどうするのか、ということも、宿泊事業をする上で考えないといけないことです。
下水道が整備されている地域では、汚水は下水道に放流することになります。
下水道に流された汚水は、自治体によって処理されます。
下水処理施設にも、処理能力に限度があります。
そもそも下水処理施設はそこに住む人たちの汚水を処理することを前提としていますので、
宿泊施設のように、一般的な居宅よりも多くの人が汚水を発生させる可能性がある施設
については、一定の規制を設ける必要があります。
また、下水道が整備されていない地域では、自ら汚水の処理をして川や海などの公共水面に放流することになります。
下水道と異なり、それぞれが責任をもって汚水処理をしなければいけませんが、
宿泊施設は、一般的な居宅よりも多くの人が汚水を発生させる可能性がある施設
ですので、汚水の排水に一定の規制が必要です。
法は、旅館業施設について、
下水道整備区域については「公共下水道使用開始届」を、
下水道未整備区域については「水質汚濁防止法に基づく特定施設設置届」を、
提出しなければなりません。
(場所と規模によっては「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づく手続きが必要になる場合もあります。)