風営法(風適法)を超簡単に解説③【番外編】「なんで風俗営業って名前なの?」
ご注意:「超簡単」にこだわったので、表現に厳密性を欠いているおそれがあります。
(このシリーズにおける)前回、「風俗営業」という言葉の意味をご説明申し上げたのですが・・・・。
なぜこういう商売を「風俗営業」と呼ぶのか?
という疑問をお持ちの方も少なくないと思うのです。
だって、「風俗」という言葉の意味は、
ある時代やある社会における、生活上の習わしやしきたり。風習。用例として「明治の風俗」「性風俗」。
小学館『デジタル大辞泉』より
なのですから、およそ「キャバクラ」とか「ホストクラブ」とか「ぱちんこ」とか「ゲームセンター」などには結びつかないし、ましてや「デリヘル」とか「ソープランド」とかにも直結しないわけです。
何故なのでしょうか?
(以下は私の持論であり、諸説あるうちの一つでしかないと思いますので、異論は認めます。)
人間という生き物は、お酒を飲むこと(飲む)、賭け事をすること(打つ)、性的な嗜好を満たすこと(買う)を、大昔からしてきた。
- 考古学上最古の酒は紀元前7000年(もっと原始的な酒も存在する)
- 賭博の起源はおそらく貨幣経済の確立よりも前のこと
- 性欲は人間の動物的本能であり、性のサービスを取り扱う商売の歴史も古い
「飲む・打つ・買う」を商品とするビジネスは、人間の本能的欲望に立脚した、歓楽性・享楽性を扱う営業と言える。
これらの本能的欲望は、それゆえに完全に禁圧することはできないし、また、すべきでもないのではなかろうか。
また、これらのサービスは、適正・健全に営まれれば、市民生活に憩いと潤いを与える有意義なサービスとなり得る。
けれど、自由主義、資本主義の世界においては、ビジネスである以上競争が生じるのは必然であり、その競争の中で提供するサービスがエスカレートしていくのも当然の流れである。
これらのビジネスは、本能的欲望に立脚しているが故、提供サービスのエスカレートが不適切、不健全に行われれば、
1.しばしば人間の理性を麻痺させ、歓楽性・享楽性に歯止めが効かなくなり、
2-1.性的行為が公然となった結果、善良な公衆の性的羞恥心が害される。
2-2.遊興行為がその程度を逸脱した結果、勤労の美風が害される。
2-3.一般市民の生活環境の平穏が害される。
2-4.判断能力の未熟な年少者の健全な育成が害される。
3.これらの現象の結果、社会の規範意識が低下するに至り、
4.売春、児童買春、人身売買、性的非行、賭博等の犯罪が誘発されることとなる。
だから、明治政府下の警察は、東京警視庁諸規則(明治7年)に定める警察の職務を次のように定めた。
- 人民の権利を保護し、営業に安んぜしめること
- 健康を看護して生命を保全せしめること
- 放蕩淫逸を制して風俗を正しくすること
- 国事犯を隠密中に探索警防すること
つまり、元来の意味通りの「風俗」=「人々の生活習慣」を律することが治安の維持につながると考えたわけだ。
この考え方やこのような警察の役割の一つを「風俗警察」と呼び、その規制(あるいは取締り)の対象になる営業を「風俗営業」と定義付けるに至った。
というわけです。
そういうつもりで見てみると、この風俗警察の考え方を、まさしく反映させているのが、風適法第1条になります。
(目的)
第一条 この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。