(備忘録)貸室業と旅館業について
今回は備忘録的記事で、個人的メモみたいなものです。
テーマは、マンスリーマンションやウイークリーマンション、個室ビデオ店、ネットカフェ等と旅館業の関係についてです。
【下宿営業の範囲について】
昭和六一年三月三一日(衛指第四四号)
各都道府県各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知
旅館業法(昭和二三年法律第一三八号。以下「法」という。)第二条第五項に規定する「下宿営業」については、昭和三二年八月三日衛発第六四九号公衆衛生局長通知第一(四)により、「なお、いわゆるアパート、間貸し等のように一時的又は比較的短期間の止宿のための施設と通常目されないものは法第二条第五項の下宿には該当しないものであること」として、下宿営業に該当するか否かの判断についての例示がなされている。しかしながら、これまでの運用において下宿営業と貸室業との区別が必ずしも十分ではなかつたため、本来下宿営業の許可の対象とならない施設についても許可が求められている事例も見受けられるとの指摘がなされている。
「下宿営業」とは、法第二条第五項に定義するとおり、「人を宿泊させる営業」であつて、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けるものをいうが、「人を宿泊させる営業」という旅館業の営業の本質においては、他の旅館業の営業と相違はないものである。
ここで、「人を宿泊させる営業」とは、アパート、間貸し等の貸室業との関連でみると、
一 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること。
二 施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業しているものであること。
の二点を条件として有するものであり、これは下宿営業についても同様である。このような観点からみると、例えば、いわゆる学生下宿は、部屋の管理が専ら学生に委ねられており、しかも、学生がそこに生活の本拠を置くことを予定していることから、営業の許可の対象とはならないものである。
今後とも、以上の観点から、許可の要否につき判断されたい。
(付記)
一について
法は、営業者がその営業施設の構造設備についてのみならず、施設の管理面についても責任を負うことを前提として必要な規制を行つている。このため、法第四条は、営業者に宿泊者の衛生に必要な措置を講じることを義務づけており、施設についての衛生上の維持管理は営業者において行うことを予定している。この点において、室内の管理が間借り人に全面的に委ねられている間貸し等と根本的に異なるのである。
二について
旅館業においては、その営業施設が社会性を有する形で、一般大衆に利用されるものであるからこそ、公衆衛生又は善良の風俗の維持の観点から必要な規制を行うのである。従つて、宿泊者に生活の本拠を与えることを予定したアパートのような形の営業形態は、個々人の生活の集積に過ぎず、少なくとも現行の旅館業法による規制は予定しないものである。
なお、いわゆる「ホテル住まい」として、他に生活の本拠を有さない者が、長期間ホテル等に滞在する場合等においては、その者は、そこに生活の本拠があると認められることもあろうが、営業全体としてはそうした形態を予定していない場合、当然、前記二に該当することとなる。
【旅館業法運用上の疑義について】
昭和六三年一月二九日 衛指第二三号
各都道府県・各政令市・各特別区衛生部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知
照会内容
近年、社会需要の多様化に伴つて、新たな営業形態を持つ施設が出現しており、本件もいわゆるウィークリーマンションと称する短期宿泊賃貸マンションとでもいうべき施設で、旅館業と貸室業の中間的な営業形態をもつものと考えられます。旅館業法の運用にあたつては、昭和六十一年三月三十一日付衛指第四四号厚生省生活衛生局指導課長通知が示されているところですが、本件の旅館業法上の取り扱いについて疑義が生じたため、至急ご回答願います。
(施設の状況及び管理等)
1 施設は既存のアパート、マンションの空室又は専用に建築した室を賃貸する。
2 利用日数の単位は、一週以上とし最長制限の定めはないが、実態としては一~二週間の短期利用者が大半である。
3 利用者は手付金を支払つて予約し、入居時までに物品保証金及び利用料等を支払い賃貸契約を締結した上、入居する。
4 客室には日常生活に必要な設備(調理設備、冷蔵庫、テレビ、浴室、寝具類等)が完備している。
5 室内への電話器、家具等の持ち込みは禁止している。
6 利用期間中における室内の清掃等の維持管理は、全て利用者が行う。
7 シーツ、枕カバーの取り換え、浴衣の提供等リネンサービスは行わない。なお、利用者からの依頼があれば請け負い会社を斡旋する。
8 食事は提供しない。
9 光熱水費は各個メーターで契約解除時に別途清算する。
10 本施設の利用者は、主として会社の短期出張者、研修生、受験生等である。
質問点
昭和六十一年三月三十一日付、厚生省指導課長通知によれば、旅館業法にいう「人を宿泊させる営業」とは、
1 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあるものと社会通念上認められること
2 施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として営業しているものであること
の二点を条件として有するものであるとされている。
本施設を、この二条件に照らして判断すると、
1 契約上、利用期間中の室内の清掃等の維持管理は利用者が行うこととされているが、一~二週間程度という一月に満たない短期間のうちに、会社の出張、研修、受験等の特定の目的で不特定多数の利用者が反復して利用するものであること等、施設の管理・経営形態を総体的にみると、利用者交替時の室内の清掃・寝具類の管理等、施設の衛生管理の基本的な部分はなお営業者の責任において確保されていると見るべきものであることから、本施設の衛生上の維持管理責任は、社会通念上、営業者にあるとみられる。
2 また、生活の本拠の有無についても、利用の期間、目的等からみて、本施設には利用者の生活の本拠はないとみられる。
前記より、本施設を、旅館業法の適用対象施設として取り扱うのが相当と考えるが如何。
回答
昭和六十二年十二月二十五日付け六二衛環環第七二七号をもつて照会のあつた件について、左記のとおり回答する。
近年、いわゆるウィークリーマンションをはじめとして、新しい形態の旅館業類似営業がみられるが、これらが旅館業法にいう「人を宿泊させる営業」に該当するか否かは、公衆衛生その他旅館業法の目的に照らし、総合的に判断すべきものであることはいうまでもない。照会の施設については、貴見の通り、旅館業法の適用対象施設として取り扱つてさしつかえない。
【渋谷区マンスリーマンション等建築等規制条例】
(目的)
第1条 この条例は、次世代を担う区民の健全育成を目指すとともに、安全で安心して暮らせるまち渋谷を形成し、快適なまちづくりを行う観点から、極めて短期間に使用者の入れ替わるマンスリーマンション・ウィークリーマンション及びレンタルルーム(以下これらを「マンスリーマンション等」という。)の建築等に対し必要な規制を行うことにより、良好な生活環境及び地域社会の実現を目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) マンスリーマンション・ウィークリーマンション 共同住宅の全部又は一部を、敷金若しくは礼金又は保証金を要せず、原則として7日以上2年未満の期間の定期借家契約により使用させる施設をいう。
(2) レンタルルーム 共同住宅の全部又は一部を、時間を単位として人に使用させる目的に使用する施設をいう。
(3) 建築 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第13号に規定する建築、同条第14号に規定する大規模の修繕、同条第15号に規定する大規模の模様替又は同法第87条第1項に規定する用途の変更(以下単に「用途変更」という。)をいう。
(4) 共同住宅等 建物の全部又は一部の用途が、共同住宅である建築物をいう。
(同意申請)
第3条 別表に定める区域内において共同住宅等の建築をしようとする者(前条第3号に規定する建築に関する工事の請負契約の注文者若しくは請負契約によらないで自らその工事をする者又は工事を伴わずに用途変更をする者をいう。以下「建築主」という。)は、次に掲げる手続のうちいずれか最初に行う手続を開始する前に、区規則で定めるところにより、あらかじめ区長に同意の申請(以下「同意申請」という。)をし、その同意を得なければならない。
(1) 建築基準法第6条第1項(同法第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による確認の申請又は同法第6条の2第1項の規定による確認の申請
(2) 都市計画法(昭和43年法律第100号)第29条、第32条、第43条第1項、第53条第1項及び第65条第1項の規定による許可等の申請又は協議の申出
(3) 渋谷区中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例(昭和54年渋谷区条例第15号)第5条第2項の規定による標識設置の届出
(4) 渋谷区ワンルームマンション等建築物の建築に係る住環境の整備に関する条例(平成14年渋谷区条例第31号)第6条の規定による建築計画の届出
(5) その他区長が特に必要があると認めて指定するもの
(同意の要件)
第4条 区長は、建築主から前条の規定による同意を求められた場合において、当該共同住宅等が次の各号に掲げるいずれかに該当するときは、同意をし、その旨を通知しなければならない。
(1) マンスリーマンション等に該当しないとき。
(2) マンスリーマンション等に該当するものが、当該施設の管理及び経営形態を総合的にみて、使用者の使用する部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が経営者にある場合、又は使用期間、目的等からみて、使用者が使用する部屋に生活の本拠を有するものでないと認められる場合に該当しないとき。
(3) マンスリーマンション等に該当するものが、当該施設の建築について、当該共同住宅等の敷地から周囲200メートル以内の住民及び当該住民で構成する団体から協定の締結を求められた場合のすべてについて、書面による協定が締結されているとき。
(同意の制限)
第5条 区長は、建築主から第3条の規定により同意を求められた場合において、前条各号のいずれにも該当しないときは、同意をしてはならない。この場合において、区長は同意しない旨を通知しなければならない。
(審議会からの意見聴取)
第6条 区長は、第3条の規定により同意を求められた場合には、渋谷区ラブホテル建築規制条例(平成18年渋谷区条例第31号)第12条に規定する渋谷区ホテル等建築審議会(以下「審議会」という。)の意見を聞かなければならない。
2 審議会は、前項の規定により区長から意見を求められた事項を審議するものとする。
(計画の公開)
第7条 建築主は、区規則で定めるところにより、当該共同住宅等を建築しようとする敷地内の公衆の見やすい場所に、当該建築の概要を表示しなければならない。
2 建築主は、当該建築の計画について、当該共同住宅等の敷地から周囲200メートル以内の住民に対し説明会を開催し、その結果を区長に報告しなければならない。
3 前項の規定にかかわらず、マンスリーマンション等に該当しない共同住宅等については、説明会を開催することを要しないものとする。
(同意申請書の閲覧)
第8条 区長は、第3条の同意申請に関する図書のうち、区規則で定めるものについては、閲覧の請求があったときは、これを閲覧させることができる。
(同意を得た共同住宅等の変更)
第9条 第4条の規定により同意を得た共同住宅等について、変更(建築に該当するものを除く。)を行おうとする者(以下「所有者」という。)は、次の各号のいずれかに該当するときは、新たにあらかじめ区長に同意申請し、その同意を得なければならない。
(1) 第4条第1号に該当し同意を得た共同住宅等の全部又は一部を、マンスリーマンション等に変更しようとするとき。
(2) 第4条第2号に該当し同意を得た共同住宅等の全部又は一部を、同号に規定する要件を具備しないマンスリーマンション等に変更しようとするとき。
2 第3条から前条までの規定は、前項の場合について準用する。
(報告)
第10条 区長は、建築主又は所有者に当該共同住宅等の構造、設備及び管理に関する報告を求めることができる。
(立入調査)
第11条 区長は、前条に定める建築主又は所有者からの報告その他通報を受けた場合は、この条例の施行に必要な限度において、職員に当該共同住宅等の敷地又は建築中若しくは完成後の共同住宅等に立ち入り、必要な調査を行わせることができる。ただし、住戸に立ち入る場合においては、あらかじめ、その居住者又は使用者の承諾を得なければならない。
2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。なお、立入調査は犯罪捜査として認められたものと解してはならない。
(中止命令等)
第12条 区長は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、当該共同住宅等の建築について改善勧告をし、又は建築の中止を命じることができる。
(1) 第4条の同意を得ないで当該共同住宅等を建築し、又は建築しようとする者
(2) 虚偽の同意申請により当該共同住宅等を建築し、又は建築しようとする者
2 区長は、前項の規定による命令を行おうとする場合は、あらかじめ、建築の禁止を命じようとする者に対して意見を述べ、証拠を提出する機会を与えなければならない。
3 区長は、第1項の規定による命令を受けた者がその命令に従わないときは、その旨を公表するものとする。
4 区長は、第1項の規定による命令を受けた者がその命令に従わないときは、その旨を表示した標識を同項の規定による命令に係る共同住宅等又は当該共同住宅等の敷地内に設置することができる。
(禁止命令等)
第13条 区長は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、当該共同住宅等の使用について改善勧告をし、又は使用の禁止を命じることができる。
(1) 第9条第2項の規定により準用する第4条の同意を得ないで当該共同住宅等をマンスリーマンション等として使用させ、又は使用させようとする者
(2) 第9条第2項の規定により準用する第3条の申請をする場合において虚偽の申請を行い当該共同住宅等をマンスリーマンション等として使用させ、又は使用させようとする者
2 区長は、前項の規定による命令を行おうとする場合は、あらかじめ、使用の禁止を命じようとする者に対して意見を述べ、証拠を提出する機会を与えなければならない。
3 区長は、第1項の規定による命令を受けた者がその命令に従わないときは、その旨を公表するものとする。
4 区長は、第1項の規定による命令を受けた者がその命令に従わないときは、その旨を表示した標識を同項の規定による命令に係る共同住宅等又は当該共同住宅等の敷地内に設置することができる。
(委任)
第14条 この条例の施行について必要な事項は、区規則で定める。
別表(第3条関係)
都市計画法で定める第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域
東京都文教地区建築条例(昭和25年東京都条例第88号)で定める第一種文教地区及び第二種文教地区