トレーラーハウスで旅館業の許可は取れるか?③
前回(トレーラーハウスで旅館業の許可は取れるか?②)の続きです。
前回(トレーラーハウスで旅館業の許可は取れるか?②)はこちら。
前々回(トレーラーハウスで旅館業の許可は取れるか?①)はこちら。
トレーラーハウスは建築物?建築物ではない?
どちらなのでしょうか?
というところで、前回のお話は中断していました。
答えは「どちらとも言える。」です。
これではあまりにも無責任な回答ですので、もう一歩踏み込んで、
「どういう場合にトレーラーハウスは建築物として扱われるのか」
「どういう場合にトレーラーハウスは車両として扱われるのか」
という点を説明します。
バス、キャンピングカー及びトレーラーハウス等の車両(以下「トレーラーハウス等」という。)を用いて住宅・事務所・店舗等として使用するもののうち、以下のいずれかの観点により、土地への定着性が確認できるものについては、法第2条第1号に規定する建築物として取り扱う。
◆建築物として取り扱う例
- トレーラーハウス等が随時かつ任意に移動することに支障のある階段、ポーチ、ベランダ、柵等があるもの。
- 給排水、ガス、電気、電話、冷暖房等のための設備配線や配管等をトレーラーハウス等に接続する方式が、簡易な着脱式(工具を要さずに取り外すことが可能な方式)でないもの。
- その他、規模(床面積、高さ、階数等)、形態、設置状況等から、随時かつ任意に移動できるとは認められない(詳細下記)もの。
◆「随時かつ任意に移動できるとは認められないもの」の該当例
- 車輪が取り外されているもの又は車輪は取り付けてあるがパンクしているなど走行するために十分な状態に車輪が保守されていないもの。
- 上部構造が車輪以外のものによって地盤上に支持されていて、その支持構造体が容易に取り外すことができないもの(支持構造体を取り外すためにはその一部を用具を使用しなければ取り外しができない場合等)。
- トレーラーハウス等の敷地内に、トレーラーハウス等を移動するための通路(トレーラーハウス等を支障なく移動することが可能な構造〔勾配、幅員、路盤等〕を有し、設置場所から公道に至るまで連続しているもの)がないもの。
なお、設置時点では建築物に該当しない場合であっても、その後の改造等を通じて土地への定着性が認められるようになった場合については、その時点から当該工作物を建築物として取り扱うことが適切である。
(平成25年版「日本建築行政会議」より引用)
以上のことから、トレーラーハウスが車両として取り扱われるためには、最低でも次の点をクリアする必要があります。
- トレーラーハウスを公道まで移動させるための通路が確保されていて、かつ、邪魔になるものがない。
- トレーラーハウスを支える支柱や、水、電気、ガス、通信などの配線・配管は、工具を使わなくても簡単に外せる。
- いつでも動かせるようにタイヤが保守されている。
その上で、車両として認めてもらうため、トレーラーハウスが製造された場所から使用される場所まで、合法的に移動させるための許可等が適切に取得されていることが必要になるものと考えられます。(例:基準緩和認定、特殊車両通行許可など)
もう一点、引用の最後の下線部を抑えておかなければなりません。これは、
「建築物か否かの判断は、建築時の状況を見て判断するのではなく、随時状況を見て判断するべきだよ」
「時間が経過して、土着性が出てきた場合は、その時点から建築物として扱うよ」
と言っています。
何年か、何十年か経過しても、この状況を維持しなけれえばならないということです。
(何年も同じ場所に車両が止まっていることが、「土着性あり」と判断されるのか否か、私は疑問に思っておりますが、解決しておりません。)
以上のような条件をクリアすることで、トレーラーハウスが建築物として取り扱われず、車両として取り扱われれば、宿泊施設として活用することができると考えられます。
さて、3回シリーズでお届けした「トレーラーハウスで旅館業の許可は取れるか?」ですが、第1回目の冒頭部で、
さて、本題の件ですが・・・・答えは「地域によっては可能」です。
と申し上げた真意をお伝えしておりませんでした。
旅館業の許可条件や取得手続きのプロセスは、自治体によって異なります。
また、建築基準法の運用や解釈も、自治体によって異なります。
ですので、私が申し述べたことはすべて原則論、個人的見解の域を出ません。
実際にこれが可能かどうかは、自治体やこれを支える職員の皆さんのご判断による部分が少なくありませんので、くれぐれも行政に確認の上、ご判断頂きたいと思います。
私から申し上げられるのは、
「私は、とあるトレーラーハウスを使った旅館業の許可手続きをお手伝いしたことがあって、そのときは無事に許可が取れましたよ」
ということだけです。